ヘンデルの「メサイア」はいわゆるオラトリオではあるが、実際には教会での礼拝用というより、オペラハウスでの上演を目的とした劇的な宗教劇とよぶべき内容となっている点がその大きな特徴である。また、この楽曲にはさまざまな版があり、作曲者自身による決定稿と呼ぶべき版が存在しないため、演奏者によって若干その内容に違いがある。
ガーディナーの演奏は、ヘンデルの晩年ロンドンで行われた際の公演に準拠するとされる版により、管弦楽もオリジナル楽器を使用したものとなっている。キリストの予言・受難・復活といった宗教的題材を描くのにふさわしく、研ぎ澄まされた感性がにじみ出る演奏で、全体的にテンポは早めで端正なスタイルを堅持しつつ、この作品のもつ娯楽性も忘れることなく表現されている。
とかくオリジナル楽器による演奏は、演奏そのものに神経が集中しすぎて楽器のためにレコーディングしているような退屈さが出やすいが、ガーディナーとイングリッシュ・バロックの面々においてその心配は無用である。(奈良与志雄)
DISC 1
01. 第1部 シンフォニア
02. 第1部 慰めよ、なんじらが民を慰めよ、と
03. 第1部 もろもろの谷は高く
04. 第1部 かくて主の栄光はあらわれ
05. 第1部 万軍の主かくいいたもう
06. 第1部 されど彼のきたりたもう日に誰か耐えることをえんや?
07. 第1部 彼はレビの子らをきよめん
08. 第1部 みよ、おとめはみごもりて
09. 第1部 おお、よきしらせをシオンに伝えるものよ おお、よきしらせをシオンに伝えるものよ
10. 第1部 みよ、暗闇地をおおい
11. 第1部 暗きところを歩む民は
12. 第1部 われらにひとりの嬰児生まれたり
13. 第1部 ピファ
14. 第1部 野に羊を飼うものありて みよ、主の御使いきたりて 御使い彼らにいいけるは、恐るることなかれ たちまちあまたの軍勢
15. 第1部 いと高きところには神に栄光あれ
16. 第1部 おおシオンの娘よ、おおいに喜べ
17. 第1部 そのとき盲人の目は開き
18. 第1部 主は羊飼いのごとくその群れをやしない
19. 第1部 その軛はやすく、その荷は軽ければなり
20. 第2部 みよ、世の罪をのぞく
21. 第2部 彼は侮られ
22. 第2部 まことに彼はわれらの悩みを負い
23. 第2部 その打たれし傷によりて、われらはいやされたり
24. 第2部 われらみな羊のごとく迷いて
DISC 2
01. 第2部 彼をみるものは
02. 第2部 彼は神に拠りたのめり、されば神彼を助くべし
03. 第2部 なんじの誇り彼の心を砕きたれば
04. 第2部 思いみよ、その憂いにひとしき憂い
05. 第2部 彼は生けるものの地より絶たれしなり
06. 第2部 されどおんみはその魂を冥府に捨ておきたまわず
07. 第2部 おお門よ、なんじらの頭をあげよ
08. 第2部 神はかつていずれの御使いに
09. 第2部 神のすべての御使いはこれをあがむべし
10. 第2部 おんみは高き所にのぼり
11. 第2部 主はみことばをたもう
12. 第2部 ああ美しきかな
13. 第2部 その声はあまねく地にゆきわたり
14. 第2部 なにゆえにもろもろの国人はさわぎたて
15. 第2部 われらその械をこわし
16. 第2部 天に坐するもの
17. 第2部 なんじの鉄の杖もて彼らを打ち破り
18. 第2部 ハレルヤ、全能の主なる神は統べたまえり
19. 第3部 われは知る、われを贖うものの生きたまえることを
20. 第3部 人によりて死のきたりしごとく
21. 第3部 みよ、われなんじらに奥義を告げん
22. 第3部 ラッパ鳴りて
23. 第3部 されば、死は勝に呑まれたり、と
24. 第3部 おお死よ、なんじの棘はいずこにありや?
25. 第3部 されど神に感謝すべし
26. 第3部 神もしわれらに味方したまえば
27. 第3部 屠られたまい
カスタマーレビュー
最高の1枚と言って良い
まず、モンテヴェルディ合唱団の合唱が最高レベルである。合唱の行き着く先はこれといっても言い過ぎでは無かろう。ただ、これを素人がマネをすると下品になるので、入門編としてはお薦めしかねる。古楽器を使用したイギリスバロック管弦楽団の演奏もリリックで心地よい。
お見事な合唱
この演奏において、独唱者、独奏者、オケ、いずれも不満はない。しかしなによりまして、合唱が見事。各合唱曲において言葉の強弱の付け方、曲の盛り上げ方がうまい("For unto us a Child is born")。言葉を明瞭に(はっきり区切って)歌ってる。からみ合った合唱もテクストがはっきり聞こえる。各声部が、他の声部を邪魔しないように歌っている。各声部が分離している。そして各声部が浮かび上がってくるタイミング、消えるタイミングが絶妙に思える。ガーディナーの合唱指揮者としてのうまさに感心するとともに、ヘンデルの合唱曲の素晴らしさを改めて認識。合唱団のデータは、女声ソプラノ11、テナー7、カウンターテナー7、バス7。1982年録音だが録音はすこぶるよい。
本当に決定版?
確かに合唱はとても上手で、何度も聞いた曲ながら改めて味わえるような良い演奏だと思うが、クレッシェンド、デクレッシェンドが過度で好きではないところがある。また、例えばハレルヤコーラスの冒頭を「ハー、レルヤ」と、「は」と「れ」の間をはっきり切ったり、He trusted in Godの最後をif,He,de,lightと、コンマのところをはっきり切るという歌い方は、私にはかなり抵抗がある。全体には本当にきれいなので満足はしているが、「決定版」と言っている人も多いようなのでそれには疑問を感じた。
合唱団うまし!
1982年の録音。久しぶりに聴きなおしたが合唱団の巧さにあらためて驚いた。当時としてはもうダントツ一番の上手さであろう。ソリスト、オケには少し古さを感じなくもない。廉価版が出れば、今でもメサイア入門用として一番のおすすめである。廉価としてはピノックがおすすめ。現時点での個人的なメサイアの一押しはマクリーシュの録音である(バランスが非常に良いです)。
非常にしなやかで引き締まった演奏。
古楽器演奏による録音としては、もう古株になってしまった感があるが、今でも決定盤と推す人が多いのが、このガーディナー盤だ。オーケストラと合唱は、しなやかで引き締まった響きで、その巧さには文句のつけようがない。テンポは全体的に早めだが、早すぎることもなく、アクセントのつけ方も意図的で不自然なところは全く無く、非常に聴きやすい。ただ、これはガーディナーの他の録音にも言えることなのだが、ここまで都会的に洗練され、明るくクリアでクリスタルな響きだと、オリジナル楽器特有の古雅な味わいを感じ取ることができない、という贅沢な不満をもってしまう。
独唱陣は、ソプラノ、アルト、テノール、バスの4人に加えて、ボーイソプラノとカウンターテノールを入れた合計6人。キリストの誕生を告げる天の声はボーイソプラノが歌っており、そういう趣向を凝らしているのは聴いていて楽しい。アルトアリアは、アルトとカウンターテノールが分担して歌っている。
ソリストは粒が揃っているが、ソプラノのマーシャルのビブラートが少々気になる。バッハ・コレギウム・ジャパン盤でソプラノアリアを歌う鈴木美登里さんの線は細めだが可憐で可愛らしい歌声を聴いた後だと、マーシャルの声は非常に恰幅の良い声に思えてしまう(これは聴き手それぞれの好みだとは思うが)。
古楽器演奏によるメサイアで、どのCDを購入しようか迷っている方は、このガーディナー盤を購入すれば、まずは間違いないと思う。
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