坊ちゃん (お風呂で読む文庫 1)
フロンティアニセン
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オススメ度:
Book (2004-09-01)
価格:¥ 1,050(税込)
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カスタマーレビュー
「私の個人主義」の具現作か
本作は言うまでもなく、文豪漱石の代表作であり、国民的な人気を誇る小説である。漱石の松山での英語教師時代の体験を活かしたものとされる。一般には、江戸っ子であり無鉄砲であるが正義感が強く明朗快活な「坊ちゃん」が悪漢を懲らしめる痛快劇として解釈されている。登場人物を本名でなく「渾名」で呼ぶのも漱石の工夫であり、本作の特徴である。
最近、小林信彦氏が「うらなり」という小説を上梓された(未読)。これを契機に本作を見直す動きもあるようである。私も、子供の頃読んだ時は気付かなかったが、改めて考えてみると「坊ちゃん」は作中ほとんど会話をしないのである。仲間の「山嵐」を含めてだ。自分の考えを他人に明かさない。明朗快活というイメージとは程遠い。心を許せるのは自分を幼い頃から見守ってくれる女中の「清」だけである。実は孤独の人なのである。
最後に「赤シャツ」を懲らしめる理由も、決して仲間意識や「うらなり」への同情からではなく、あくまで「坊ちゃん」の価値判断に基づいてのことなのだ。悪く言えば独善的である。
漱石は「私の個人主義」という概念を表明しているが、これはイギリス留学時代に味わった自身のノイローゼ体験とヨーロッパ流の当時の個人主義に影響されるところが大きかったように思う。本作はこの「個人主義」を四国のある中学を巡るドラマに託して描いたものに感じられる。
そして、女性の問題である。上述の通り、「坊ちゃん」が心を許す女性は「清」だけである。本作のヒロイン「マドンナ」に対する「坊ちゃん」の態度は曖昧だ。これは「三四郎」で主人公が結婚していくヒロインに対し「stray sheep ...」と呟くのに似ている。そして、この後も漱石の小説において女性の問題は、頭の痛いテーマであり続けたに違いない。
単純に痛快劇としても楽しめるし、深読みすれば切りがない。まさに国民的小説である。